近年、発達障害という脳機能の障害に対する理解が深まり「落ち着きがない」「自分の世界から抜けない」「集中力がない」といった自分自身や子どもの行動に「発達障害ではないか」と疑いを持つ人も増えています。
発達障害と聞くと「英語の習得が難しいのではないか」と考える人も多いですが、実は英語が得意なケースも多いです。
本記事では、発達障害の人が英語学習でつまずきやすい点や、発達障害の人が英語学習に取り組む際のコツをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 発達障害の人には英単語の暗記が苦手な人が多い
- 発達障害の人には視覚教材を活用した英語学習がおすすめ
- 得意なことと不得意なことを理解し、英語学習を工夫する必要がある
発達障害の人が英語学習でつまずきやすい点
発達障害のある人は「落ち着きがない」「集中力がない」と言われており、英語の習得が難しいのではないかと考える人も多いでしょう。発達障害の人は、具体的に英語学習のどのような点を難しく感じるのでしょうか。
本章では、発達障害のある人が英語学習でつまずきやすい点を4つご紹介します。
英単語が覚えられない(英単語の暗記が苦手)
発達障害の人の中には、英単語の暗記が苦手だという人が多いです。なぜなら、英単語を暗記する際にアルファベットの形を認識することが難しかったり、覚えてもすぐに忘れてしまったりするからです。
そのため発達障害の人には、あまり負荷のかからない英単語の暗記法をおすすめします。たとえば、一度に暗記する英単語は5〜10個など少ない量にしたり、一気に覚えようとせずに1つの単語を覚えたら1つ復習したりしましょう。
文法の仕組みが理解しづらい
発達障害の人は、文法の仕組みが理解しづらいです。覚えた文法も時間が経つとすぐに忘れてしまうため、文法を丁寧に復習する習慣をつけるとよいでしょう。
特に、be動詞の使い方や疑問文の作り方など、基本的な文法の知識は定着するまで何度も学習するのがおすすめです。時にはカードを活用して、英文を組み立てる練習をするのもよいでしょう。
英語が聞き取りにくい
発達障害があっても音声を聞き取ることに苦手意識を持つ人は少ないですが、長文のリスニング問題を聞き取る際には論理的な読解力が必要となるため、長いリスニング問題は苦手な人が多い傾向があります。リスニング問題には問題の答えを推測しなければ解けない問題もあるため、推測問題には特に苦手意識を持つ人が多いと言われています。
長文のリスニング問題は、会話の構成を意識すると解きやすいです。また、英語の聞き取り練習にはYouTubeなどから自分の興味のあるジャンルの教材を選ぶのがよいでしょう。
発音できない
発達障害の人は、英単語を見た時にアルファベットと音声が結びつかずに、発音がわからない・できない人が多いです。発達障害の人が英語学習をする際には、フォニックスを並行して学ぶことをおすすめします。
フォニックスとは、英語ネイティブの子どもが英語の読み方を学ぶために開発された学習法です。フォニックスを学べば、英単語を見た時にどのように発音すればよいかがわかるようになり、発音に対する苦手意識も低くなるでしょう。
ASD(自閉スペクトラム症)の特徴と実は英語学習が得意な理由
ASDとは自閉スペクトラム症のことで、自閉症とも呼ばれます。一般的にASDの人は、文字や図形、物に関心を持ち、人の態度や表情にはあまり興味を示しません。
感覚刺激に敏感で、人が多い場所や気温が激しく変化する場所は苦手ですが、実は英語学習が得意な人が多いと言われています。本章では、ASDの人が英語学習が得意な理由について詳しく解説します。
ASD(自閉スペクトラム症)の人は英語学習が得意なケースが多い
- プレッシャーが少ない
- イメージや視覚で物事を理解するのが得意
- 英語は理論的なルールがある
ASDの人が英語学習を得意になる理由は、大きく3つあります。まず、英語学習はプレッシャーが少ないため、プレッシャーに過剰に反応してしまうASDの人にとって、英語学習に取り組むハードルは低いです。
またASDの人はイメージや視覚で物事を理解することが得意なため、イラストを使って英単語を覚えたり、動画を視聴して知識を習得したりすることに長けていて英語学習が得意と言われています。最後に、物事を理論的に考えるのが得意なASDの人にとって、英語は習得しやすいという理由が挙げられます。
ASD(自閉スペクトラム症)の人は英会話の学習が得意
- 文法の組み立てやルールの理解が早い
- 自分の学習スタイルを確立しやすい
- 視覚的な学習の活用が得意
ASDの人は、英会話の学習が得意です。ASDの人が英語学習が得意と言われる理由の1つに、文法の組み立てやルールの理解が早いという点が挙げられます。
ルールを理論的に理解できるため、英会話に役立つ知識を習得できるのです。そして、ASDの人は自分の学習スタイルを確立しやすいため、効果的な英会話の学習法を確立して英会話を効率的に学べます。
さらに、ASDの人は視覚的な学習の活用が得意なため、英会話の動画を学習に取り入れることで効果的に英会話を学べます。
ASD(自閉スペクトラム症)の人は受験英語の学習が得意
- 自分のペースで学習が進められる
- ルールや形式を守ることが得意
- テキスト学習は理解が早い
ASDの人は受験英語の学習が得意と言われています。では、どのような理由が挙げられるのでしょうか。
1つ目は、受験英語は自分のペースで学習が進められるという理由です。マイペースに物事を進めるのが得意なASDの人にとって、受験勉強は取り組みやすい学習の1つです。
また、ASDの人はルールや形式を守ることが得意なため、文法知識を多く試される受験英語は得意だと感じます。さらに、ASDの人はテキスト学習の理解が早いため、テキストを使用して対策をする受験英語はASDの人にとって取り組みやすい学習の1つです。
ASD(自閉スペクトラム症)の人が英語学習するコツ
前章ではASDの人の特徴について説明しました。では、文字や図形に強い関心を持ち、感覚刺激に敏感という特徴を持つASDの人が英語学習をする際のコツにはどのようなものがあるでしょうか。
本章では、ASDの人が英語学習をするコツを3つご紹介しますので、ぜひ英語学習の参考にしてください。
視覚で理解できる学習ツールを活用
ASDの人は、視覚を活用して物事を理解することが得意です。ASDの人が英語学習を行う際には、イラストや動画などのツールを活用するのがよいでしょう。
具体的には、英単語の暗記にはイラストが描かれた英単語帳を使用したり、イラスト付きのフラッシュカードを使用したりするのがおすすめです。また、英文法の学習の際には文法解説の動画を活用し、リスニング学習の際にも動画を活用して、聴覚だけではなく視覚からも情報を得て学習を行いましょう。
ストレスのない環境で学習する
ASDの人には感覚刺激に敏感な人が多く、ストレスの多い環境では学習に集中することが難しい人が多いです。英語学習を行う際は、できるだけストレスのない環境で学習するのがよいでしょう。
たとえば、ASDの人は大勢の人がいる場所が苦手なため、個室で静かに学習できる環境があるとよいです。また、信頼できる講師に英語を習うことも重要です。
ASDの人は人間関係の構築に時間がかかり、信頼できない人とのコミュニケーションにはストレスを過剰に感じる人が多いため、講師選びも慎重に行う必要があります。
英語学習のルールを作り習慣化する
ASDの人は、毎日のルーティンを作り、同じことを繰り返し行うことが得意です。英語学習を行う際には、英語学習のルールを作り習慣化するのをおすすめします。
たとえば「朝起きたら10分間英単語の暗記をする」「寝る前の15分間で英語の動画を見る」など、日常の行動に英語学習を加えると、学習を習慣化しやすいです。
ADHD(注意欠如・多動症)の特徴と実は英語学習が得意な理由
ADHDは、注意欠如・多動症とも呼ばれる障害です。ADHDの人は、物忘れが多かったり、話に集中できなかったりすることが多く、多動や衝動などといった特徴が挙げられます。
ADHDの人は、授業に集中することが難しい場面が多いですが、ADHDの人の中には英語学習が得意です。本章では、ADHDの人が英語学習を得意とする理由をご紹介します。
ADHD(注意欠如・多動症)の人はリスニングや英会話が得意なケースが多い
ADHDの人の中には、耳から情報を得ることが得意な人がいます。聴覚優位のADHDの人は、リスニングで聞こえた英語の音を処理することが得意なため、リスニング問題や英会話を得意とする人が多いです。
耳から情報を得ることが得意なADHDの人は、アニメや映画などの動画教材を用いて英語を勉強したり、音楽で英語を学んだりするのがおすすめです。また、文法のテキストや英語の小説などを読む際は、英文を声に出して読むことで学習効果が高まります。
楽しく効率的に英語学習できる
ADHDの人は人とのコミュニケーションを楽しめる人が多いため、英会話を積極的に行うとよいでしょう。また、ADHDの人は体を動かすことが得意なため、手遊びや音楽を英語学習に取り入れたり、ジェスチャーを交えながら会話の練習を行ったりするのがおすすめです。
ADHDの人は、興味を持つと物事にエネルギッシュに取り組む傾向があるため、興味関心に合わせて学習に使用する教材を選ぶことが効果的です。
ADHD(注意欠如・多動症)の人が英語学習するコツ
ADHDの人は話や物事に集中できないといった特徴を持っています。では、ADHDの人はどのようなことに注意して英語学習に取り組めばよいでしょうか。本章では、ADHDの人が効果的に英語学習を行うためのコツを5つご紹介しますので、ぜひ英語学習の参考にしてください。
ディクテーションを取り入れる
ADHDの人には、ディクテーションを取り入れた英語学習がおすすめです。ディクテーションとは、耳で聞いた英文を文字に書き起こす英語学習法のことで、主にリスニング力の向上に効果があるとされています。
ディクテーションは学習者への負荷が大きい学習ですが、特に聴覚優位のADHDの人であれば、ディクテーションに苦手意識を持つことなく学習を進められ、継続的な学習も期待できます。
本人が興味をもつ学習ツールを活用する(アニメ・映画・ゲームなど)
ADHDの人は、興味を持ったものにはエネルギッシュに取り組める傾向があるため、本人が興味を持つ学習ツールを活用するのがよいでしょう。たとえば、アニメや映画などの聴覚教材を使用したり、ゲームを使ったりして楽しく英語を学ぶのがおすすめです。
インプットした知識をそのままにするのではなく、アニメや映画で学んだ英単語やフレーズは、英会話で積極的にアウトプットするのも重要です。インプットとアウトプットをバランス良く学習に取り入れてください。
海外に行く・ネイティブの友人を作る
ADHDの人の中には、人とのコミュニケーションを楽しんだり、知らない土地に行ったりすることが好きな人が多いです。好奇心旺盛なADHDの人には、海外に行って現地の人との会話を楽しみながら英語を学ぶのがおすすめです。
さらに、海外旅行や日本でのサークル活動などを通して、ネイティブの友人を作るのも良いでしょう。異文化交流のためのさまざまなサークル活動やイベントがあるため、参加できるものがあれば参加してみましょう。
集中力をコントロールする・ながら英語学習はしない
ADHDの人は、1つのことに集中するのが苦手です。英語学習をする際も、音楽が聞こえたり、スマホの通知が鳴ったりすると、集中力が切れてしまいます。
ADHDの人が英語学習をする際は、個室で学習したり、集中の妨げになるものを遠ざけたりして、なるべく学習に集中できる環境を作ることが大切です。また、休憩をこまめに取ることも集中力コントロールのためにおすすめです。
不安や疑問を解消したうえで英語学習する
ADHDの人の特徴として、自分の不安な気持ちやモヤモヤする気持ちに敏感に反応してしまうという特徴があります。英語学習を行っている際にも、少し不安を感じていたり、疑問があったりすると、学習に集中できなくなってしまいます。
英語学習をする際には、不安や疑問を解消したうえで学習を進めましょう。人と話したり、インターネットを活用したりするのがおすすめです。
【まとめ】発達障害の人が英語学習を行うときはコツをおさえよう
本記事では、発達障害の人が英語学習でつまずきやすい点や、発達障害の人が英語学習に取り組む際のコツについて説明しました。発達障害の人は皆英語学習が苦手とは限らず、むしろ英語学習を得意とする人も多くいます。
発達障害の人が得意なことと苦手なことを把握して、効果的な英語学習ができるように学習方法を工夫してみてください。